【本所①009】本所花町

町番号:本所①009

町名:本所花町

読み方:ほんじょはなまち Honjo-Hanamachi

区分:町丁

起立:1693(元禄6)年

廃止:1930(昭和5)年

冠称:1911(明治44)年4月30日まで「本所」

現町名:墨田区緑四丁目

概要:元は神田旅籠町一・二丁目にあった町屋で「門跡前花町」ともいった。町名は東本願寺の門前で香花の商いをしたことによる。1657(明暦3)年の大火で、1661(寛文元)年に用地となり、本所竪川南側の本所林町五丁目、本所徳右衛門一丁目に代地を賜り、本所花町一・二丁目と2ヶ所になる。1684(貞享元)年、再び収公されたが代地がないため、金154両2分銀13匁8分2厘を受領して退転。1693(元禄6)年、本所竪川通北側の本所村松町三丁目と本所柳原町一丁目の跡に移り、町内を1町とし「本所花町」と唱える(備考)。1828(文政11)年の家数168(町方書上)。当町が「本所七不思議」の『送り拍子木』の舞台である。

慶応4年5月12日(1868年7月1日)、江戸府に所属。慶応4年7月17日(1868年9月3日)、東京府に所属。1872(明治5)年、北方の松平能登守下屋敷、植村帯刀等の土地を合併(画報)。同年の戸数143・人口603、物産は釣竿、釣糸、釣錘、魚籠、鑢、傘、駒下駄、麻裏草履(府志料)。

1878(明治11)年11月2日、東京府本所区に所属。1889(明治22)年5月1日、東京府東京市本所区に所属。

1930(昭和5)年、帝都復興計画の一環により、緑町四丁目に編入となり消滅。現行の四丁目。

※なお、本所緑町五丁目と本所花町の境界が、三ツ目通りとなった時期が正確には不明である。どこかにそれを著した書物はないものか。

本所緑町五丁目は、『嘉永新鐫本所繪圖』(1855(安政2)年)やアプリ『大江戸今昔めぐり』では、三ツ目通りを挟んで両側町となっており、本所花町はその東に存在する。

しかし、『安政江戸近郊図』(1857(安政4)年)では、『嘉永新鐫本所繪圖』や『大江戸今昔めぐり』では三ツ目通りの東の本所花町と分け合っていた1区画にも「五」と書かれていた。また、逆に『安政江戸圖』(1859(安政6)年)、『萬延江戸図』(1860(万延元)年)、『懐寳御江戸繪圖』(1861(文久元)年)、『明治二年東京全図』(1869(明治2)年)においては、三ツ目通りより東には本所緑町五丁目がなかったことになっており、全て「ハナ丁」とある。

江戸末期のものもそうだが、明治は中期になっても、題名に「明細」や「精測」とは謳っているものの、実にいい加減なものばかりで、それでも余りあてにならない地図をかなり多く見ていったが、見れば見るほど混乱を来す。たとえば、『繪入東京御繪圖』(1881(明治14)年)などは、今の区役所通りに三之橋が架かっていたことになっているし、他の地図でも「ハナ丁」が三ツ目通りより西に位置するものも複数存在するなど。

そこで、以前から他のものよりも信頼を寄せている『東京全図(1879(明治12)年)』を見ると、三ツ目通りより東の部分に『嘉永新鐫本所繪圖』や『大江戸今昔めぐり』と同様に「同五丁目」とあり、その1区画を本所花町と分け合っていた。これは『東京全図』が細かなところまで略さずにきちんと書いている証拠であると判断し、ここを基準に考えた。

『東京全図』の後に出版された地図を見ていくと、『改正區分東京細圖 : 全』(1881(明治14)年)では、三ツ目通りより東は「本所花丁」と、『改正東亰繪圖』(1881(明治14)年)でも「ハナ丁」…。以下省略するが、それ以降に出版された地図にはどれも、三ツ目通りから東のその1区画を本所緑町五丁目と本所花町が分け合っているものを見付けることはできなかった。こうして、番地入りで出版された『明治四十年一月調査東京市本所區全圖』(1907(明治40)年)や『携帯番地入東京區分地圖 : 本所区之部』(1910(明治43)年)に辿り着くまで、三ツ目通りから東には本所緑町五丁目は完全に存在せず、本所花町のみの記載となっていた。

したがって、本所緑町五丁目の三ツ目通りより東の部分が本所花町に吸収されたのは、「1857(安政4)~1859(安政6)年までに」と仮説を立てて各地図を年代順に見ていったが、結論としては、信頼をおく『東京全図』ではまだ江戸期同様、三ツ目通りより東の部分に本所緑町五丁目が書かれていたので、それが出版された(1879(明治12)年)内、またその翌年の1880(明治13)年前後に本所緑町五丁目と本所花町の境界は三ツ目通りとなったと考えられる。

考えてみれば、深川区深川北松代町一~四丁目が本所区に移管され、本所区本所松代町一~四丁目となったのも、1880(明治13)年である。15区が成立し、その後、細かい町域変更が行われる際に、本所緑町五丁目と本所花町は町域の変更を行ったと考えるのが自然なのかもしれない。

撮影場所:本所花町

撮影地:墨田区緑四丁目5番2号(GSパーキング 竪川 三之橋北詰東側)

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江戸町巡り

落語や時代劇、近代文学の愛好家諸氏、 江戸の町を散歩してみませんか? 表紙:小梅五之橋町 ※コピペしてもかまいませんが、その際は逐一出典を明らかにしてください。