【小石川①042】小石川町

町番号:小石川①042

町名:小石川町

読み方:こいしかわちょう Koishikawachō

起立:1872(明治5)年

廃止:存続 「小石川」として(但し、現在の「小石川」は別の所)

冠称:なし

現町名:文京区後楽一丁目、春日一丁目

概要:古くは豊島郡小石川村のうち。「小石川」の由来は、現・豊島区要町の粟島神社の湧水(弁天池)に発して長崎、池袋、大塚を流れた谷端川の下流を「小石川」といい、千川上水から養水を受けたので「千川」ともいった。中国風には「礫川(れきせん)」といい、礫川会館・礫川公園等、現在も使われている。「小石川」の謂れは、この辺りの谷端川が、①小石(礫)の多い川原を流れていた(江戸砂子)とする説と、②加賀国石川郡から白山神社を勧請したことにより小・石川(神社略紀)とする説がある。現在、文京区に神田川以外に開渠で川は全く流れていないが、つい先頃までは弦巻川・千川・東大下水(指ヶ谷)・桜川等が流れていた。

後の町域は、寛永(1624~1645年)の頃、御三家水戸藩の上屋敷が置かれ、屋敷地の周りは長屋塀で囲まれ、神田川に面して勤番者を収容した百軒長屋が建ち並んでいた。左甚五郎の作になる龍を配した門(享保年間(1716~1736年)に焼失)は、人々が日の暮れるのも忘れて龍を眺めていたので「日暮しの御門」といわれた。また、屋敷内の庭園後楽園は藩祖頼房が起工し、明暦の大火による焼失後、1669(寛文9)年頃に完成した回遊式築山泉水庭園。光圀は造園に着手した際、父頼房の意を重んじて一木一石も濫りに動かさなかったという。後楽園の名は宋の学者范文正の「先天下之憂而憂、後天下之楽而楽」の語に基づいて朱舜水筆の『後楽園』の扁額が掲げられていた。『大日本史』等の編纂が行われた彰考館も邸内にあった。

水戸藩邸跡は1869(明治2)年に官収された後、1871(明治4)年8月に陸軍用地となり、1879(明治12)年には砲兵廠条例により1番地に、明治期以降の小石川の象徴ともいえる陸軍兵器工場の東京砲兵工廠が置かれた。東京砲兵工廠の前身は幕営関口製作所を接収した東京工廠で、砲兵工廠は海軍造兵廠、横須賀海軍工廠、大阪砲兵工廠とともに四大工廠と称され、日本陸軍造兵界の接点として重工業、兵器工業の発展育成に努めた。開設以来、村田銃、三八式歩兵銃等を作り、銃砲弾薬、兵器武具の製造修理を行い、1923(大正12)年に陸軍造兵廠に転換した。この砲兵工廠で働く者は旧幕時代からの諸藩のお抱え鉄砲師が多く、付近一帯には冷飯草履に腰弁を提げた職工さんたちが芋屋に屯する光景が見られた。なお、主に小石川柳町小石川掃除町(後の八千代町)、小石川久堅町が職工たちの家族の居住地となった。

1872(明治5)年、水戸藩邸跡に起立。町名の由来は江戸期以来の汎称地名による。同年の戸数5・人口91(府志料)。

1878(明治11)年11月2日、東京府小石川区に所属。1889(明治22)年5月1日、東京府東京市小石川区に所属。1936(昭和11)年、後楽園庭園は文部省、以後は東京市の所管となる。1937(昭和12)年、陸軍造兵廠が小倉(福岡県)に移転した跡地に後楽園スタディアムが設けられ、プロ野球のメッカとなった。1938(昭和13)年、後楽園庭園が有料公園として開放された。

1940(昭和15)年4月1日、当町の東部が春日町一・二丁目に編入となり、残余を小石川町一・二丁目に分ける。1943(昭和18)年7月1日、東京都小石川区に所属。1947(昭和22)年3月15日、東京都文京区に所属。

以上のとおり、当町は小石川各町の冠称がそのまま町名となっているが、1872(明治5)年からの新しい町であり、関口町小日向町と同様に、この小石川町が小石川の中心地だったというわけではない。寧ろ後述のとおり、「小石川」の名は小石川町町域とは別の地域で引き継がれていくことになる。

1964(昭和39)年8月1日、住居表示の実施により、一丁目が後楽一丁目に、二丁目が春日一丁目に編入となって消滅するはずだったが、同日、春日町三丁目の全部と初音町の一部、柳町の一部、八千代町の一部が小石川一丁目に、富坂一・二丁目の全部と、初音町の一部、表町の一部が二丁目に、表町の一部、柳町の一部、八千代町の一部、戸崎町の一部、久堅町の一部が三丁目に、表町の一部、久堅町の一部、竹早町の一部が四丁目に編入となり、「小石川」を継承。なお、春日町一丁目が後楽一丁目に、春日町二丁目が春日一丁目と本郷一丁目にそれぞれ振り分けられた。さらに1966(昭和41)年4月1日には久堅町の一部、竹早町の一部、大塚窪町の一部、白山御殿町の一部が五丁目として新設され、現在に至る。

撮影場所:小石川町

撮影地:文京区後楽一丁目6番6号(小石川後楽園)

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江戸町巡り

落語や時代劇、近代文学の愛好家諸氏、 江戸の町を散歩してみませんか? 表紙:小梅五之橋町 ※コピペしてもかまいませんが、その際は逐一出典を明らかにしてください。